2010年6日28日

「真夏の夜の夢」

セントラルパークサマーステージ。
夏の間だけ、セントラルパークの特設ステージで、
あらゆるジャンルのライブから、バレエやオペラまでが行われるステージ。
いろんなミュージシャンを見に行ったそのステージに立つ日が来た。


今日は、真夏日。
マッコイタイナーグループと、
私の参加するスタンリークラークバンドのダブルビル。
夜だとはいえ、まだ日も下がらない暑い中、
70歳を超えるマッコイが1時間強演奏するというのは、
並大抵ではないスタミナだと思う。
彼の演奏は相変わらず力強くて、ピアノの低音が、地鳴りのように
鳴り響く。
演奏に歴史を感じて、今もなお、新しい事をし続ける姿勢に、圧倒される。


そして、私達の出番。
セントラルパークの木々が囲むそのステージに、初めて立つ。
すごい人だ。
椅子には人、人、人。
椅子の間の芝生にも、人、人、人。
後ろの方にも、立っている人、人、人。
ものすごいエネルギーがそこにある。


そして、演奏開始。
スタンリーもノリノリ。1曲目からすごい歓声。
とりあえず、お客さんとの一番最初の儀式が終わった。
繋がれるか、否か。
繋がった。


2曲目に入り、ベースの調子がおかしい。
ブーッという音がしては、音が時々出なくなる。
すごい楽しみにしている野外ライブに限って、
なぜか起こるトラブル。
ノード君が2回とも壊れた「フジロックの呪い」を思い出す。


そして、私のソロセクションに入った頃、
ベースが完全にマイクを通さなくなった。
スタンリーも、右を見たり左を見たりして、サウンドの人を探す。
弾き続けるが、誰にも聞こえない。
ベースのピックアップマイクがどうやら壊れているらしい。
だからといって、曲を止めるわけにはいかないし、
今ソロパートで舵取りをしているのは私なわけだから、
私に全責任がかかってくる。


とにかく、止めてはいけない。
なんとかお客さんに
「ハプニングはあったけど、あれはあれで良かった!」
と言ってもらえるような流れを、作っていかなくてはならない。
正直、非常に厳しい局面だった。
ベースがないと難しいアップテンポのキメキメの曲だったからだ。
Return to foreverのNo Mystery。
フジロックを思い出した。
最も弾くのを楽しみにしていたカンフーワールドチャンピオンという曲で、
ノードリードがうんともすんとも言わなくなった。
いつも、楽しみにしすぎると、こういう仕打ちが待っている。
まるで、音楽の神様のいたずらのように。


スタンリーのサウンドエンジニアも、
人ごみをかき分けてステージに来るまでには、
結構な時間がかかる。
とにかく、ベースがいなくなった、のではなく、
ベースが敢えていない面白い演奏にしていかなくてはいけない。
そこを念頭に置いて、演奏し続ける。
数分間のガチンコ勝負。
一度曲を中断し、最初からやり直すなんて選択肢は私の中にはなかった。
どんなピンチもチャンス。
今の状況だからこそ作れる面白いものがあるはずだ。
エンジニアの人がやっと走ってきて、ベースが治り、
私のソロセクションを無事脱出。
キーボードのソロにバトンタッチし、
ふとピアノの左横の舞台袖を見た時、
そこに立っている人達を見て、私は驚愕した。


レニーホワイトとアルディメオラだった。
前を見れば、スタンリークラーク。
あまりの状況に、頭がパニックして出たイメージ映像かと思った。
Return to foreverのメンバーの4人中3人がここにいる状況。
鈍器で殴られたような衝撃だった。
御本家の前で、トラブル続きの状況下での演奏。
スタンリーは一緒に演奏しているとはいえ、
スタンリー、レニー、アル、3人そろった前で、
必死でベースレスで、彼らの曲を弾き続けた事を、
私は一生忘れないだろう。


ステージ脇で働いていた人に聞いたら、
私が、レニーとアルを見つけたとき、
私は相当間抜けな顔をしていたらしい。
びっくりしすぎて、あごがはずれるかと思った。
漫画のような顔をしていたに違いない。


この曲が終わった瞬間、
会場全体がスタンディングオーベーションになった。
良かった。ピンチを乗り越えたんだ、と確認できた。
レニーとアルも満面の笑顔で拍手をしてくれた。
夢のステージで夢の人達と逢う。
まるで真夏の夜の夢。


この夏だけで、50本を越えるライブがある。
スタンリーとのライブが8割を超える。
今は、スタンリーとの夏期集中講座に参加しているようで、
毎日いろんな驚きや発見がある。
今は、スタンリークラークという闘技場で、
「スタンリークラークの教え」という、
秘伝のまきものを、私は身を持って学んでいるところだ。
最高の夏期講習は、まだまだ続く。

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